フリーランス白書2025について
本記事では、2025年版フリーランス白書にて公開されたフリーランス実態調査の結果を基に、IT業界のフリーランスの働き方や収入、働く上での課題、法や制度に関する状況についてご紹介します。
本記事は一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が発表している「フリーランス白書 2025」のもとに作成しています。
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フリーランス白書とは、フリーランス協会がフリーランスの年収や仕事獲得経路などの定点観測のほか、時流に合わせた自主調査を実施した結果がまとめられたもので、年に1回発行されています。
目次
稼働時間と収入の実態
フリーランスの月間稼働時間は「140~200時間未満」が最多でその割合は33.7%であり、次いで「100~140時間未満」が19.2%を占めています。いわゆるフルタイムに相当する「月140時間以上」の稼働者は全体の47.1%に達していることから、安定的な労働時間を確保している層が多いことがわかります。
年収に関しては「200~400万円未満」が最多でその割合は26.5%、「400~600万円未満」が21.0%と続く結果となりました。「年収400万円以上」の層は全体の47.7%を占めており、一定の経済的自立を果たしている人も多いと考えられます。また、自身の収入が世帯収入の「8割以上」を占める人は45.7%に上り、家計の主軸となるケースも少なくないようです。
一方で、年収600万円以上の層は全体の約26%でした。フリーランスとして高収入を得るには専門性や営業力、継続的な案件獲得が必要であることが示唆されています。
仕事獲得経路と営業ツール
最も収入が得られた仕事獲得経路は「人脈(知人の紹介含む)」(35.6%)であり、次点で「過去・現在の取引先」(29.9%)「エージェントサービスの利用」(12.4%)と続きました。信頼関係や既存ネットワークが仕事の獲得や収益に直結する傾向が強く、営業活動よりも関係性の構築が重要な要素となっていることがわかります。
営業ツールとしては6割以上が「ビジネス用メールアドレス」「名刺」を活用しています。一方で「SNSアカウント」を活用する人も約5割で、デジタルプレゼンスの重要性も高まっていることがうかがえます。
働き方選択の動機
フリーランスやパラレルキャリアを選択する理由としては、「働き方の裁量」「キャリア自律の観点」「柔軟性」「ワークライフバランス」などが中心的な理由となっています。具体的には「自分の裁量で仕事をするため」や「働く時間/場所を自由にするため」という回答が約7割でした。また「より自分の能力/資格を生かすため」や「挑戦したいこと/やってみたいことがあるため」という内容の回答も多く見られました。
従来の雇用形態では得られにくい自由度や自己決定権を重視する傾向が強く、柔軟な働き方が生活の質向上に直結していると考えられます。また、企業に依存せずに自分のスキルや価値観に基づいて働きたいという意識の高まりから、キャリアの自律性を求める人が増えていることがわかります。
働き方に対する満足度
現在の働き方に対する満足度に関しては、多くの項目で7~8割の人が満足していると回答しました。特に「就業環境(働く時間/場所など)」や、「仕事上の人間関係」、「達成感/充実感」、「プライベートとの両立」は多くの人がが満足と回答していました。
一方で、「多様性に富んだ人脈形成」「収入」「社会的地位」に関しては満足度が約3~4割にとどまりました。「収入」に関しては満足と回答した割合が34.0%であるのに対し、不満と回答した割合が40.2%となっており、不満を抱いている人の方が多いという結果となりました。
課題と制度改善の実感
フリーランスとして働く上での課題としては、「ライフリスク(健康・子育て・介護等)に関する社会保険・社会保障」や「金融機関や不動産会社等における社会的信用力の向上」が上位に挙げられています。特に住宅ローンやクレジット審査などにおいて、フリーランスであることが不利に働くケースが多く、制度的な支援が求めているフリーランスも多いようです。
一方で、2024年11月施行のフリーランス新法と労災保険特別加入制度の対象拡大による影響で、発注者とのトラブル対策・防止や労災保険について改善されてきていると感じているフリーランスがいることもこの調査結果からわかります。
偽装フリーランスの懸念
約3割が「偽装フリーランス」として、発注元の指揮監督下で働かされている疑いがあると回答しています。形式上は業務委託であっても実態としては雇用に近いケースが存在することを示しており、労働者性の判断基準に関する議論が必要であると考えられます。
また、職種ごとに労働者性の該当項目に違いが見られる点も重要です。ITエンジニア・技術開発系では指揮監督、諾否の自由の有無、拘束性のいずれも該当する回答者が約3割を占めており、多重下請け構造が一因となっている可能性があります。クリエイティブ・Web・フォト系では指揮監督を受けている、契約内容以外の業務にも対応させられるという回答が多く見られた結果となりました。出版・メディア系では諾否の自由がなくほぼ専属のように働かせられるという声が多く見られました。コンサルティング系では時給制で勤務時間を管理される、契約内容と実態が異なるという回答が多く見られました。
フリーランス法施行の反響
「フリーランス法」の認知度は非常に高く、回答者の98.7%が認知しているという結果となりました。一方で、理解度は66.8%にとどまり、制度の内容や活用方法に関する理解促進が課題となっていることがわかります。
また、フリーランス法について取引先との会話に出たことがあると回答した人は22.7%にとどまり、発注者側に法令遵守のため必要な対応があるにもかかわらず、実務レベルでの浸透は限定的であるという現状が見受けられました。
インボイス制度の影響
インボイス制度に関しては、登録申請者の割合が昨年の41.5%から47.8%へと6.3%増加しており、制度への対応が進んでいる様子がうかがえます。一方で、「登録するつもりはない」とする人も30.2%存在し、それぞれの事業の状況に応じた判断がなされていることがわかります。
登録申請者のうち価格転嫁できた人は18.7%にとどまり、制度導入による収益への影響が懸念されています。また、インボイス施行後、免税事業者のうち契約解除や報酬値下げに直面した人は25.4%に達していたことが調査結果からわかりました。
名前の使い方と制度的希望
フリーランスとしての活動時に使用する名称については、戸籍上の名前を使う人が6割、屋号やビジネスネーム、旧姓など戸籍外の名前を使う人が4割に上りました。女性回答者に限定してみると、戸籍上の名前の利用者が減少し、旧姓使用者が1割を超えるという結果となりました。
また、「選択制夫婦別姓制度を導入し選択肢を増やした方が良い」とする意見は全体の62.3%、女性では69.6%に達しており、制度的な柔軟性を求める声が強いことがわかります。
まとめ
今回のフリーランス実態調査の結果は、フリーランスという働き方が多様であり、その自由さと柔軟性が多くの人にとって魅力である一方、制度的な不備や社会的な課題も依然として存在することを示しています。フリーランスが安心して働ける環境づくりには、今後も継続的な制度改善と社会的理解が不可欠です。
参考・引用:
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
「フリーランス白書 2025」
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