フリーランス保護新法とは

先日、国会でフリーランスを保護する法律が可決されました。今回はこの法律について説明したいと思います。
「フリーランス保護新法」とは、様々な取引において、不利になることがあるフリーランス(フリーランスに似た業種も含む)を守るために作られた新たな法律になります。正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、フリーランスの働きやすい環境を作ることが目的で、トラブル等などを軽減する内容になっています。2024年秋ごろまでに施行される予定です。

Humy
 

フリーランス保護新法ができた背景

フリーランス人口の増加

フリーランス保護新法ができた背景にはフリーランス人口の増加があります。

2020年5月に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果」によるとフリーランスの試算人数は462万人にのぼっています。
 
また、ランサーズ株式会社が2021年に以下のプレスリリースを発表しています。

フリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円であることがわかりました。調査を開始した2015年と比較すると、人口は68.3%(640万人)、経済規模は62.7%(9.2兆円)増加しました。(引用:ランサーズプレスリリース「ランサーズ、『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』発表」

 
調査対象によって数値は異なりますが、すでに多くの人がフリーランスという働き方を選択していることがわかります。

前述した「フリーランス実態調査結果」によると、現在フリーランスの方がフリーランスを今後も継続したい割合は約8割になりますので、フリーランスの人口が減る可能性は低いと考えられます。
 

(引用:内閣官房「フリーランス実態調査結果」)
 

発注者側とのトラブル回避

これまでに発注者側とのトラブルを経験しているフリーランスは多いようです。
内閣官房の調査によると、約4割のフリーランスが「発注の時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった」、「報酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった」など何かしらのトラブルを経験しています。(「フリーランス実態調査結果」より)。

 

(引用:内閣官房「フリーランス実態調査結果」)

 

(引用:内閣官房「フリーランス実態調査結果」)
 
上記のような状況や問題を解決するために、今回フリーランスを保護するための法律が整備されることになりました。
 

フリーランス保護新法とは

フリーランス保護新法は、簡単に言いますと「フリーランスの働き方改革」になります。
詳しく見ていきましょう。
 

フリーランスの契約について

フリーランスとの契約について、発注者側が取り組むべき事項として以下のことが盛り込まれました。

     

  1. 1.業務委託の開始・終了に関する義務
  2. 発注者側はフリーランスと契約した場合、業務委託内容、報酬などを書面の交付またはメールなどの電磁的記録できちんと明示しなければなりません。また、継続的業務委託を中途解除する場合は、30日以内に報告することが義務化されています。
     

  3. 2.業務委託の募集に関する義務
  4. 発注者側がフリーランスを募集する際に、業務委託内容を明示する場合は、その情報等を正確に最新の内容を伝えなければならないです。業務委託内容の明確化を求められます。
     

  5. 3.報酬の支払に関する義務
  6. 発注者側のフリーランスへの支払いは、60日以内とされていますので、60日以上で支払いをしていた発注者側は契約の見直しをする必要があります。 これはIT業界の場合は、守られているところが多いと思います。
     

  7. 4.フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為
  8. フリーランスとの一定期間以上の間の継続的な業務委託の場合は、以下の①から⑤までの行為を行ってはいけないとし、⑥及び⑦の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはなりません。
     
    ① フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
    ② フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
    ③ フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
    ④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
    ⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
    ⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
    ⑦ フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させたり、やり直させること

 

フリーランスの労働環境について

フリーランスの労働環境について、発注者側が取り組むべき事項は以下になります。

     

  1. 1.ハラスメント対策
  2. 発注者側は、その使用する者等によるハラスメント行為について、適切に対応するために
    必要な体制の整備その他の必要な措置を講じるもの等となっており、ハラスメント対策を強化する必要があります。
     

  3. 2.出産・育児・介護との両立への配慮
  4. 発注者側は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、フリーランスからの申出に応じ、出産・育児・介護と業務の両立との観点から、就業条件に関する
    交渉・就業条件の内容等について、必要な配慮をする必要があります。
     

    違反した場合の対応等

    公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができます。
    命令違反及び検査等を拒否した場合には、50万円以下の罰金に処されることもあります。この罰則には法人両罰規定があります。
     

    国が行う相談対応等の取組

    国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとします。

     

    まとめ


    2024年秋頃にフリーランス保護新法が施行されれば、契約のトラブルや労働環境が現状よりも改善される可能性が高まるミィ。
    一方で、発注者側の負担(口頭で伝えた内容を電磁的記録で伝えることが必要になる、労働環境の整備)などが出てくるので、フリーランスの雇用自体を見直す企業が出てくる可能性があるミィ。見直す企業が増えるとフリーランスの働き先が減少するので、一概にフリーランスにとってメリットだけではないミィ。
    発注者側がきちんとルールを守って、フリーランスの方が今よりも働きやすい環境になるように今後もどう対応していくか見ていきたいミィ!

    参考:
    特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の概要
    特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)(令和5年度法律第25号)

    ※本記事の正確性については最善を尽くしますが、これらについて何ら保証するものではありません。本記事の情報は執筆時点(2023年6月)における情報であり、掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。必ず最新情報をご確認ください。